万年筆、青酸カリ、遺体リレー。トリック解説「ブルータスの心臓」東野圭吾作

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文庫本で362ページ。サクサク読める。

あらすじ

 最新ロボットの研究者であり野心家の末永拓也は、勤務先の創業者令嬢・星子との結婚を目論んでいた。だがある日、遊び相手の康子から妊娠を告白される。困惑する中、星子の兄・直樹から、康子殺害計画を持ちかけられる。直樹もまた康子と男女関係にあり、妊娠をネタに脅迫されていたのだ。綿密に計算された完全犯 罪は、無事成功するかに思われたが、驚愕の事態が発生する。

光文社書籍解説サイト「ブルータスの心臓」https://books.kobunsha.com/book/b10128460.html

トリック①遺体リレー

役割分担

 ABCの3人が役割を分担する。

 Aはターゲットを殺害し、死体を名古屋まで運ぶ。その後、予め決めた場所で車を乗り捨て、新幹線で大阪に帰る。

 BはAが捨てた車に乗り、名古屋から東名高速に乗って厚木インターを目指す。(鍵は車体の裏に貼り付けてある。)高速道路から下りて、予め決めた場所でCと合流する。Cと合流後、Bは名古屋にトンボ帰りする。

 CはBを待つ。車で来ておき、Bと合流後、一緒に死体を車から移し替える。Cは東京に死体を運ぶ。

トランプマジック

 計画の首謀者である仁科直樹は、役割をトランプで決めた。テキトーにカードを引いて決めるのだ。しかし実際は、仁科直樹がトランプで殺人計画での役割を決めたのは、カッコつけではなく、トランプマジックの技術を応用して操作できるからだった。それにより仁科直樹はAを引いた。

隠された4人目

 さらに実は、計画にはABCの3人だけでなく、実はDがいた。計画の首謀者である仁科直樹は、最初から殺人をDに任せて、本人は手を汚さない計画を立てていたのである。その為、仁科直樹はAを選んで、殺害だけを自分の言うことを聞く者に任せ、死体の運搬だけを行う。もし計画がバレても、実際に殺害はしてないと言える。
 しかし、直樹は逆にDに殺害されたため、本来運ばれる遺体は康子であるところを、仁科直樹の死体が運ばれることになった。 そこから物語が始まる。

トリック②万年筆と青酸カリ

 万年筆のコンバーター内に、青酸カリの結晶を入れておき、予め酸性を強めておいた青インクと共に贈り物として贈る。仁科直樹の葬儀の翌日に、喪主から「粗品」と書かれた小包が送られてきても不信には思われない。
 青酸カリの結晶は単体では安定した物質だが、酸性の性質をもつ青インクと反応して、シアン化水素、つまり青酸ガスを発生させる。万年筆と共に送られた青インクは酸性を強める為に、硫酸か何かを数的落とされていた。
 この小包を受け取った者が、送られてきた万年筆で青インクを吸入してしまうと、青酸ガスが発生する。万年筆の近くに顔がある訳なので、ガスが空気中に拡散する前に吸ってしまい、即死する。

おまけ(感想)

 タイトルにブルータスの名前が入っていることと、小説の最後に末永がブルータスにより首を縊られることを考えると、作者はロボットに感情はなく、犬のように人に懐くことはありえないと言いたかったのだろうか?ブルータスと言えば裏切りの代名詞であり、心臓は心のことを意味すると考えれば筋は通る。だが、ブルータスが出てくる場面は少なく、作品のテーマとなっているかという微妙。

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