この投稿は、「硝子の塔の殺人」を薦めるものである。ミステリ初心者を読んだことのある人は「硝子の塔の殺人」を読もう。ミステリを知らない人もこれを読もう。よほどミステリマニア出ない限り、楽しめる筈だ。
書評
実業之日本社より引用。「硝子の塔の殺人」のサイト: https://www.j-n.co.jp/books/978-4-408-53787-0
2022年 本屋大賞ノミネート! (2022年1月20日現在)
ミステリを愛するすべての人へ
当作の完成度は、一斉を風靡した
わが「新本格」時代のクライマックスであり、
フィナーレを感じさせる。今後このフィールドから、
これを超える作が現れることはないだろう。
島田荘司
ああびっくりした、としか云いようがない。
これは僕の、多分に特権的な驚きでもあって、
そのぶん戸惑いも禁じえないのだが――。
ともあれ皆様、怪しい「館」にはご用心!
綾辻行人
500ページ、一気読み!
知念実希人の新たな代表作誕生
作家デビュー10年 実業之日本社創業125年 記念作品
雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。
地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。
ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、
刑事、霊能力者、小説家、料理人など、
一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。
この館で次々と惨劇が起こる。
館の主人が毒殺され、
ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。
さらに、血文字で記された十三年前の事件……。
謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。
散りばめられた伏線、読者への挑戦状、
圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。
著者初の本格ミステリ長編、大本命!
【目次】
プロローグ
一日目
二日目
三日目
最終日
エピローグ
『硝子の塔の殺人』刊行に寄せて 島田荘司
守破離の「守」
書評の名前を見れば分かるが、錚々たる人達だ。そして「硝子の塔の殺人」に何度も名前が出てくる人たちでもある。作中では、綾辻行人が書いた『十角館の殺人』や『時計館の殺人』などの館シリーズや、島田荘司作の御手洗潔シリーズが、何度も言及される。ミステリ好きが集まったミステリ小説だからだ。
それだけではなく、この本はミステリ小説としてのテンプレートを守り、そして破っている。芸道における守と破の部分を果たしていると言える。
雪で外界と遮断され、外と連絡を取ることはできない陸の孤島。そこに集められた個性的なメンバーたちと、名探偵。そして次々に起こる不可解な連続殺人事件。
ミステリ作品に造詣が深くなくても分かるようなテンプレをてんこ盛りにして、この作品は始まる。
高濃度の謎解きゲーム
この作品に出てくる謎は小説内で開示された情報だけで解き明かすことが可能になっており、そしてその謎は何層にも折り重なっているので簡単に解き明かすことはできない。謎解きとして一級品である。
私は読みながら謎を解こうとしたものの、できなかった。そこで感じられたのは、「どうやったらこんな事を思いつくのだろう」という感嘆のみだった。この感嘆は、作品が良いミステリであることの証左だ。
ラノベの様に読みやすい文体
文体はラノベの様に読み易い。
文に重厚さを求めるなら減点対象にする人もいるのかもしれない。しかし、この読み易い文体は、501ページもあるこの本を読み通しやすくしてくれる。文体が小説の内容を理解する妨げになっていないからだ。
この本の何が面白いのか
この小説が格別なのは、この小説にお楽しみ所が2回あるという点だ。普通のミステリ作品では、真相を知る楽しみは一度しかない。しかし、この小説は違う。二度楽しむことができるミステリ作品だ。
この小説は、ミステリ作品(ミステリ小説や映画など)のテンプレが多分に含まれていて、作中でも有名なミステリ作品への言及がある。名前だけの言及ではなく、硝子の塔の殺人というミステリ小説の登場人物が、ミステリ作品についてメタ的な視点から語り、それを読者をさらにメタ的な視点から読むという構図になっている。
おまけ
・ダ・ヴィンチの「硝子の塔の殺人」の書評はこちらhttps://ddnavi.com/article/d920893/a
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