おすすめミステリ作品紹介
「六法推理」
著者 五十嵐 律人
定価: 1,870円 (本体1,700円+税)
六法推理とは
現役弁護士作家が放つ、青春×多重解決ミステリ!
その悩み、一人で抱え込まずお気軽に無法律へ。
学園祭で賑わう霞山大学の片隅。法学部四年・古城行成が運営する「無料法律相談所」(通称「無法律」)に、経済学部三年の戸賀夏倫が訪れる。彼女が住むアパートでは、過去に女子大生が妊娠中に自殺。最近は、深夜に赤ん坊の泣き声が聞こえ、真っ赤な手形が窓につくなど、奇妙な現象が起きているという。戸賀は「悪意の正体」を探ってほしいと古城に依頼するが……。リベンジポルノ、放火事件、毒親問題、カンニング騒動など、法曹一家に育った「法律マシーン」古城と、「自称助手」戸賀の凸凹コンビが5つの難事件に挑む!
(kadokawa公式サイトから引用 https://www.kadokawa.co.jp/product/322107000450)
もくじ
六法推理
幕間――法曹一家
情報刺青
幕間――誰彼味方
安楽椅子弁護
幕間――秋霜激烈
親子不知
幕間――陽炎天秤
卒業事変
この小説の内容
物語は無料法律相談事務所(通称「無法律」)というサークルから始まる。このサークルはその名の通り、無料で法律相談をしてくれるサークルだ。部員は法曹ではないけれど、法曹の卵であり、このサークルからは何人も法曹を輩出している。
ホームズ役をするのが、無料法律相談事務所の唯一の部員である法学部四年の古城行成。ワトソン役が、経済学部三年の戸賀夏倫。このふたりが無法律に持ち込まれる日常の謎を解き明かす。
この小説の読みどころは、日常の法律問題とその解決だ。舞台は現代の日本。我々の住む日本の社会は法律で守られている。法律という括りが大きく抽象的過ぎて、気付きにくいけれど、法律の関わる問題は日常的なものなのだ。
では、どのような問題が無法律に持ち込まれたか。
chapter1 六法推理
chapter1では怪奇現象。相談者の戸賀夏倫が住むアパートでは、過去に女子大生が妊娠中に自殺。最近は、深夜に赤ん坊の泣き声が聞こえ、真っ赤な手形が窓につくなど、奇妙な現象が起きているという。
この相談以後、戸賀夏倫は無法律に入りびたり、ワトソン役を務めることになる。
chapter2 情報刺繍
chapter2 情報刺繍では、リベンジポルノについて。相談者はそれなりに名の知れたYoutuber。マッチングアプリで出会った男と初日でホテルに行ったところ、性交しているところを録画され、動画をアップロードされたという。
chapter3 安楽椅子弁護
chapter3 安楽椅子弁護では、大学の学園祭の準備中に起きた火災事件について。その事件は事故として処理されたものの、主人公の古城行成とその友人であり被害者でもある男性は、これが事故ではなく放火だとして、大学の学園祭実行委員会と戦うことになる。
chapter4 親子不知
chapter4 親子不知では、毒親から逃げたい女性が無法律に相談に来た。その女性によると、父親はおらず、母親がお金をせびってくることに悩んでいるという。母親とは距離を置いたものの、引っ越し先がバレて、家の物を母親に盗まれた。しかし、親族相盗例(親族間で起こったことなら、窃盗や横領は罪にならない)によってその母親を罪には問えない。そこで、親子不知という親と子を絶縁させるサービスが出てくるのだが…
※親族相盗例についてはベンナビ刑事事件の公式サイトhttps://keiji-pro.com/columns/162を参照した。
chapter5 卒業事変
chapter5 卒業事変では、経済学部の試験中に、その試験の回答がSNSにアップロードされた。そして、そのアップロード主は無法律のアカウントだった。
感想
個人的な感想としては、chapter1と5が良かった。法律×ミステリとはどのようなものかが分かる。法律で守られたフィールドで、我々は暮らしているのだから、そこでの矛も盾も法律なのだ。組織も人も法律を基に動く。なら、法律から事件の解明だってできるということだ。
ラノベみたいに読み易くて、見知ったミステリと違っていたので、好奇心を刺激される作品だった。
人が死なない法律ミステリ
この小説はミステリ作品であるが、人が死なないミステリだ。作中では殺人は起こらない。当然、密室も連続殺人もない。警察も名探偵もでてこない。だから殺人の描写が苦手な人も読むことができるはずだし、ミステリに苦手意識のあるひとも読めるはずだ。
専門家の書くミステリ
知念実希人氏が医師免許を持っていたように、五十嵐律人氏は弁護士資格を持っている。専門的な知見を織り込んで生まれた法律ミステリ作品が六法推理である。
以下は知念実希人氏の「硝子塔の殺人」のレビュー。
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